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◆1月1日以降:65歳以上への適用拡大
今年12月末までは、「高年齢継続被保険者」に限り、65歳以上の方も雇用保険の適用対象となっていますが、2017年1月1日以降、(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であり、(2)31日以上の雇用見込みがある方は、「高年齢被保険者」として雇用保険の被保険者となります。
◆適用拡大に伴う企業の実務
上記の適用拡大を受け、以下の手続きが必要となります。
高年齢継続被保険者である方を1月1日以降も継続して雇用している場合は、自動的に被保険者区分が変更されますので、手続きは不要です。
2016年12月末までに65歳以上の方を雇用し1月1日以降も継続して雇用している場合は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
1月1日以降に適用対象となる65歳以上の方を新たに雇用した場合も同様の手続きが必要です。
◆対象者に係る手続きのタイミング
新たに雇用した方が適用要件を満たす場合は、雇用した日の翌月10日までに提出します。
2016年12月末までに雇用した適用対象者の場合は2017年3月31日までに提出します。雇入れ後の労働条件変更により適用要件を満たすこととなった場合は、労働条件変更の日の属する月の翌月10日までに提出します。
◆4月1日以降:雇用保険料率引下げ等
12月8日に、厚生労働省の労働政策審議会(雇用保険部会)で雇用保険制度改正案の報告書が了承され、来年の通常国会に雇用保険法などの改正案が提出される見通しです。
この報告書によれば、2017年度から3年間、労使折半で負担する雇用保険料を0.8%から0.6%に引き下げます。また、失業手当の給付額を1日当たり136~395円引き上げ、倒産や解雇で離職した30~44歳の方(被保険者期間1年以上5年未満)の支給日数を120~150日にします。有期契約労働者が雇止めにより離職した場合の支給日数を拡充する措置は、5年間延長します。
さらに、通常国会には育児休業期間を最長2年とする改正案も提出される見通しですが、育児休業給付についても給付期間を最長2年とし、支給率を休業開始から半年は賃金の67%、半年経過後は50%とすることも盛り込まれています。
◆英会話学校講師の女性が自殺
2011 年に英会話学校講師の女性が自殺したのは、自宅で長時間労働を行った「持ち帰り残業」が原因であったとして、金沢労働基準監督署が労災認定しました。持ち帰り残業については自宅での作業実態の把握が困難なため、労災認定されたのは異例のことのようです。ただ、本件では、メールや関係者の話から、女性は英単語を説明するイラストを描いた「単語カード」を業務命令により2,000 枚以上自宅で作成しており、監督署、実際に単語カードを作成して時間を計測し、自宅で月80 時間程度の残業をしていたと結論付けま
した。これにより、会社での残業時間と合わせると恒常的に月100 時間程度の時間外労働があり、さらに上司からの叱咤による心理的負担によりうつ病を発症したとして、労災を認定したというものです。
◆持ち帰り残業は労働時間に含まれる?
原則、会社が承認していない持ち帰り残業は労働時間には含まれません。労働者が自己の判断で仕事を持ち帰って自宅で残業している場合、会社はその実態を把握できないため、持ち帰り残業は基本的に会社の指揮命令下にないものとして労働時間であるとは判断しないのです。ただ、持ち帰り残業が上司の明確な指示に基づいて行われている場合は、それに要した時間は、当然に労働時間に含まれることになります。また、通常の労働時間では処理できないような業務量を指示していたり、持ち帰り残業を黙認したりしていた場合などは、事実上の指揮命令があったとして労働時間と判断される可能性があることに留意する必要があります。
◆企業には様々なリスクが!
持ち帰り残業は、労災認定される可能性や残業代を請求される可能性はもちろんですが、情報漏えいの危険性もあります。企業としては、「持ち帰り残業を原則禁止する」、「どうしても必要な場合は本人に事前申請させる」、「情報漏えい対策を講じる」などのルール作りが必要となるでしょう。
◆ドライバーの待機時間に関する争い
賃金を支払わなかったトラックドライバーの待機時間(手待ち時間)について、「荷物管理を要求されて移動や連絡待ちもあり、休憩時間と評価するのは相当でない」として、労働時間に該当するとする判決が出ました(4月24日横浜地裁相模原支部)。
会社側は、「待機中は休憩も自由であり、労働時間には該当しない」と主張していましたが、裁判所はこれを認めず、従業員・元従業員計4人に対する未払い賃金約4,289万円と、これと同額の付加金の支払いを会社に命じました。
会社側の弁護士は「判決を精査したうえで今後の対応を考えたい」としており、今度控訴する可能性もあります。
◆「休憩時間」とは?
実務上は、待機時間以外にも、深夜勤務の場合の仮眠時間や昼休みの電話当番の時間などが、労働時間になるのか休憩時間になるのかが度々問題になります。
厚生労働省の通達では、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」とされています。
◆ホームページ上のQ&A
また、同省のホームページでは、「私の職場では、昼休みに電話や来客対応をする昼当番が月に2~3回ありますが、このような場合は勤務時間に含まれるのでしょうか?」という問いに対し、「休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。従って、待機時間等のいわゆる手待ち時間は休憩に含まれません。ご質問にある昼休み中の電話や来客対応は明らかに業務とみなされますので、勤務時間に含まれます。従って、昼当番で昼休みが費やされてしまった場合、会社は別途休憩を与えなければなりません。」と回答しています。
◆「規定化」がトラブル防止に
特定の時間帯が労働時間に該当するか休憩時間に該当するかについて曖昧になっているケースは多く、非常にトラブルが生じやすい問題ですが、「労働時間に該当する時間」、「休憩時間に該当する時間」を社内ではっきりさせておき、労使双方が納得したうえで規定化しておくことがトラブルを防止するための1つのポイントと言えるでしょう。
◆会議のよくある問題点
ビジネスの現場では欠かせないものであるにもかかわらず、期待した成果が得られていないことも多い会議やミーティング。
忙しいなか時間を割いているにもかかわらず、「建設的な議論はできないまま時間だけが経ってしまった…」という経験をしたことがある方も多いことでしょう。
このようなことを問題視している企業も多いのではないでしょうか。
◆ファシリテーション・スキルが鍵
そこで注目されているのが、「ファシリテーション・スキル」――人々の活動が容易にできるよう支援し、うまく事が運ぶよう舵取りする力です。
特に、会議の進行役自らがこのスキルを身につけることにより、会議の質を上げることができます。
◆ファシリテーションの4つのスキル
会議の場では、次の4つのスキルが求められます。
① 何を目的にして、誰を集めて、どういうやり方で議論していくのか、『場』をつくる
② 多くの意見を引き出すことで、参加者相互の理解を深める
③ 議論の全体像を整理して、論点を絞り込む
④ 意見をまとめ、全体の合意を形成する
◆効果的な会議に向けて
まずはこれら4つのことができているかをチェックすることが、効果的な会議を行うための第一歩となります。
◆今や社会問題に!
一般的に「依存症」というと、「アルコール依存症」や「ギャンブル依存症」、「買い物依存症」などが思い浮かびますが、近年、「テクノ依存症」というものが社会問題となりつつあるようです。
うつ病などのメンタルヘルスとの関連性や仕事への悪影響なども指摘されるなど、企業にとっても無視できない問題のようです。
◆「テクノ依存症」の特徴と症状
「テクノ依存症」は、コンピュータに過剰に適応したことによって発生する、精神的な失調症状を言うそうです。
インターネットやオンラインゲーム、スマートフォン等に没頭してしまうことが原因で発生する症状であり、「手元にコンピュータがないと不安に感じてしまう」「コンピュータに集中したいために人との会話が煩わしいと感じてしまう」など、いわば“現代病”とも言えそうです。
この症状が発生するのは、女性よりも男性のほうが多く、インターネットやオンラインゲームにのめり込みやすい若者に多いようです。
◆「テクノ依存症」による悪影響
この症状にかかると、「夜遅くまで起きているので朝なかなか起きられない」「友好な対人関係が築けない」など、実生活に大きな影響を及ぼすことになり、働くことに支障をきたしてしまうケースもあるようです。
◆企業による対策は?
企業にとっては、社員の私生活まで把握・管理することはできませんが、「日中眠そうにしている」「社内で人と接するのを避けがちである」「時間の感覚が希薄になっている」といった社員については、この「テクノ依存症」を疑ってみる必要があるかもしれません。
正しい治療方法もあるようですので、「テクノ依存症」だと判明した社員には、病院での治療を勧めることなども考えられます。